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さあ、だまされましょう
2002年12月14日
著者:義久
イラスト:ふふふ、ちひろ、子桃、えっちゃん、チロ、ひな、くらげ、アキラ、傘、たいせー、燐

◆登場人物◆
* パウロ *
水道をガミガミ魔王に直させるために、ある事をする・・・
* ガミガミ魔王 *
パウロにだまされる・・・かも
* ジルバ *
ナルシアとピエトロにだまされる!?
* ナルシア *
だましたり、だまされたり・・・
* ギルダ *
多少魔力を持っている危ない人
* ピエトロ *
少々、知恵がある。ナルシアを陰で見守っている。
* ナレーション *
ごく普通のナレーション。

◆作品構成◆
1話読み切り

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さあ、だまされましょう
2002年12月14日
著者:義久
イラスト:ふふふ、ちひろ、子桃、えっちゃん、チロ、ひな、くらげ、アキラ、傘、たいせー、燐

 
キュッ、キュッ、キュッ……

  「おや?……故障かのう? 困ったのう。タウンページ…
…じゃなかった、こういう時はのう……」
 
プルルル、プルルル、プルルル……

  「あっもしもし、ギルダ? 実は……はい……ああなるほど、
彼に頼めば大丈夫だのう。はい、それでは……」
 
ガチャ……

  「さて……」
さあ、だまされましょう
  「ん? もう朝か……」
ガミガミはカーテンから少し漏れている光に気付いて時計を見た。9時である。通常の休日ならまだ眠っている時間だが、夕べから徹夜しているためガミガミの目はきちんと開いていた。
  「まだ眠くないな。今日はたまの休みなんだから目いっぱい楽しむぞ」
徹夜しても眠くないというのは何も彼が無眠体質なわけではなくて、
昨日、一日中寝ていたお陰である。
  「ああ、何か面白そうなことは無いか?」
カーテンを開けて外の景色を眺めたガミガミの視点はすぐに一点に留まった。
  「あれは? ……あっ、やっぱりパウロだ」
ガミガミの視界の中、ちょうど彼の住んでいるアパートの真下にいるのは確かにパウロである。
  「パウロが何でここに?」
ガミガミの予想通り、パウロはガミガミの住んでいるアパ−トに入ってきた。
きっと何か用があるのだろう。
  「ハア、また間違えて5階まで行ってしまったのう。ヒック……」
一度ガミガミの住んでいる4階を通り越して5階まで行ってしまったパウロはやっとの思いで目的地の前に立ち、チャイムを鳴らした。しかし、しばらくの間返事が無かった。
  「おや? ガミガミ魔王留守かのう……」
パウロが少し不安になったころ、ガミガミがようやく扉を開けて現れた。
  「お前が突然訪ねてくるなんておかしいな。何かあったのか?」
パウロは用件を伝えた。
  「いえ、別に大した……ヒック……大した用ではないんだがのう、
昨日からこうしてしゃっくりが止まらなくて困っているのじゃ。
何か良い知恵はないもんかのう?」
  「そんなもん知るか自分で治せ」
と、言いガミガミはドアを閉めた。
同時刻、一人の少女が柿の木を眺めていた。
名をジルバ、眺めている木はナルシアの家のものである。
  「う〜ん、見れば見るほど美味しそう」
朝ごはんを抜いたわけではないが、
少し小腹の空いた彼女の目には柿の実が特別美味しそうに映った。
  「でも……」
ジルバはその柿の木のある庭にいるナルシアを疎ましそうな目で見た。
花壇に水をやっているようだ。
  「この柿の実を取るには奴が邪魔だなぁ……良い知恵はないでしょうか? う〜む……そうだ!いい考えが浮かんだぞ。ウフフフ……」
やろうとしていることは、怪盗そのものだが、
今のジルバにはそんなことはどうでも良かった。
  「ナルシア大変。国王様が……」
いかにも大変といった様子でジルバがナルシアの庭に飛び込んできた。
  「えっ?! どうしたの? 国王様がどうかしたの?」
ナルシアはパウロが大変と聞いただけですでに慌てふためいている。
  「実は国王様は昨日から重い病気にかかって入院しているんだ」
後でジルバはもうちょっとましな嘘をつけばよかったと後悔するが、
とりあえずこのときのナルシアはまんまとジルバにだまされたのであった。
  「ええっ?! それは大変、早くお見舞いに行かなくちゃ。
で、国王様はどこの病院に入院しているの?」
  「えっと確か……ホラ、ガミガミ魔王の住んでるアパートの横にある病院だったような……」
  「福島病院?」
  「そう。福島病院」
  「でもあそこは外科病院だよ。国王様は病気じゃなかったの?」
  「うっ……え〜と、とにかく行ってみれば分かるよ」
ナルシアは少し疑問に思ったが、パウロのことが心配だったのでお見舞い用の花束を作るのも忘れるぐらい急いで病院へ向かった。
  「さてと……」
 
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  「ヒック、あ〜あ、パウロのしゃっくりが移ってしまった」
上記のセリフの理由からガミガミはご機嫌斜めな状態で、
その気晴らしにと外を出歩いていた。
時を同じくして、同じ島の同じ街で必死に駆けている人がいた。ナルシアである。ナルシアはパウロが入院していると聞いて横目もくれずに全速力で駆けていた。……それにしても機嫌の悪い者と急いでいる者というのはよく事故を起こすものである。そしてそういう者同士がぶつかり合うというのもまた言うに及ばず起こりやすいことだ。
  「イタタタ、ごめんなさい、急いでたから……」
  「……ヒック、どうしたの? ナルシアちゃ〜ん、……」
両者しりもちをついて立ち上がりながら相手を確認して言った。
  「えっと……そうだ。国王様が大変なの。
重い病気にかかって昨日から入院してるんだって」
  「えっ? ……でもパウロはついさっき俺様の家に来たぜ」
  「? ……でも、ジルバが言ってたよ……」
  「ジルバが?」
ガミガミはシルバがそう言ったということを聞き、
疑うべきはここであると確信して言った。
  「それはきっとだまされているんだ。ヒック、ジルバの計略にまんまと引っかかったな」
  「ジルバが? でも何のために……あっ!」
ナルシアの頭の中に柿の木とそれを眺めていたジルバの姿が浮かんだ。
あの時は気にも掛けなかったが、ジルバはあれを狙っているに違いない。
  「ガミガミ魔王さんいっしょに来てくれる、きっとジルバちゃんは私の柿を狙ってるんだと思うの」
  「ヒック、そのかわり、柿を1つ食わせてくれないか。」
  「……」
ただ働きだけは絶対にしないというのが彼の信念だ。彼を動かすには何かしらの報酬を払わなければならない。しかし、ナルシアは、これを受け入れなかった。ちょうどその時、隠れて話を聞いていたピエトロが言った。
  「僕が行くよ」
ピエトロは、ナルシアといっしょに、家に向かった。
  「うん、デリシャス、さすがナルシアが一生懸命育てた柿は特別美味しい」
柿の木の上のシルバはそのナルシアが一生懸命育てた柿の実を何のためらいもせずに次々と口に放り込んでいた。しかしジルバが五つ目ぐらいの柿を食べていたとき、彼女のもとに二つの人影が近づいてきた。
  「むっ、あれはナルシアだな。ピエトロもいる。う〜ん、これはマズイ。
大ピンチだ……ここは隠れるしかないね」
ジルバは下に降りられないと見て、
木の上の方の葉が茂っているところに隠れた。
  「見て、ナルシア。ヒック、ここに柿の種がこんなに落ちてる」
ナルシアとピエトロは柿の木の下にたどり着き、この状況からこれはジルバが柿を食べた跡に違いないと双方確信したが、まだ黙っていた。木の上を見上げるとなにやら影が動いている。
  (ジルバはまだ木の上にいるみたいだね。作戦通りにやるよ、ナルシア)
  (うん、ジルバを懲らしめよう)
ナルシアとピエトロはアイコンタクトで作戦の開始を確認し、芝居を始めた。
  「見て見てピエトロ。ここに柿の種がこんなに落ちてるよ」
木の上にも届かんばかりの大声でナルシアが言った。それを受けてピエトロも
  「ホントだ……あれ? 木の上にヒック、木の上に何かがいるよ。
きっと柿泥棒だね」
  (ギクッ)
それを聞いたジルバは一瞬冷やりとしたが、すぐにナルシアが
  「えっ? でもあんな高いとこに人は登れないと思います。
木の上にいるんだったらきっとお猿さんだよ」
と、こう言ってくれたのでシルバはひとまず安心し、
ナルシアたちの言葉に耳を傾けた。
  「そっか、きっと猿だね。でも猿だったら鳴くものだよ。
この猿は鳴かないのかな?」
  「そうだよね〜、鳴かないんだったらやっぱり……」
ナルシアとピエトロは同時に木の上を見て言った。
  「泥棒だよね〜」
一部始終を見届けていたジルバはこれは鳴かないといけないと思ったが、
こんな時に限って猿の鳴き声をど忘れしてしまったため、何もできずにいた。
  (どうする? 猿の鳴き声はえ〜と……)
木の上のジルバが困っていることを見越してピエトロは次にこんなことを言い出した。
  「やっぱり鳴かないから泥棒だよ。ナルシア、高枝バサミがあったよね? あれで落としてやろうよ」
  「うん、そうだね。取ってくるよ」
それを聞いてジルバはついに決心し、とりあえず思いついた言葉で鳴いてみた。
  「……ワン」
木の上から犬の鳴き声がしたのを聞き、下の二人は一瞬どういうことか理解できずに凍りついたが次の瞬間には大爆笑を始めていた。
  「……クッ、ククク、アーハッハッハッ……ヒック、聞いた? 
ナルシア、猿って『ワン』って鳴くんだって」
  「おかしいよね、それじゃ犬だよ」
  「どうやらあの上には犬がいるみたいね。ウフフフ……ヒック」
その様子を見てジルバは空前絶後の大馬鹿をやってのけてしまったと思ったが、猿の鳴き声を思い出したのでもう一回鳴いてみた。
  「キー、キーキー」
ジルバは自分でも上手いと思うほどとても上手く猿の鳴きまねができたので、今度こそ完璧に下の二人をだませたと思って二人の反応を見た。ところが次にピエトロは笑いを抑えながらこんなことを言い出した。
  「あれ? 犬の次は猿の鳴き声がしたね。でも犬はあんなところに登れるはずがないし、ヒック、猿はこんな人がいる所にいるはずがない。ということは人の多いところに住んでいて高い木の上にも行ける動物……」
  「あっ、分かったよ。きっとあの上にいるのはカラスだよ」
  「あ〜なるほど。烏か、そうだねきっと烏だよ。でも……ヒック、烏も鳴くよね?あの烏は鳴かないのかな?もし鳴かなかったらやっぱり……」
二人はまた木の上に視線を送りながら言った。
  「泥棒だよね〜」
ジルバは二人が諦めずにまだ烏だの何だの言っていることを疎ましく思ったが、烏の鳴き声は知っているので自信たっぷりに鳴きまねをした。
  「カー、カーカー」
その鳴きまねがあまりに上手いので下の二人はジルバに対して少し感心したが、すぐに作戦を続行して言った。
  「あっ、鳴いた鳴いた。ヒック、でも、カラスて鳥だから飛べるよね?
あのカラスは飛ばないのかな〜?」
  「そうだよね、烏は飛ぶよね。もし飛ばなかったらやっぱり……」
  「泥棒だよね〜」
  (うっ、今度はこんな高いところから飛べって言ってる。
ここは飛ばないと……でもやっぱりこんなトコからは飛べない……)
下の二人の要求にジルバはすっかり困ってしまった。
それを知ってピエトロがさらに追撃をかける。
  「泥棒だったらちょうどいいね。僕の、ヒック……僕の持っている『電気ショックスペシャル』が家にあったから持ってきてあげよっか」
  「そんなのあるの? すっご〜い。
それで泥棒さんをビリビリにしちゃおうよ」
ナルシアは笑顔でそう言った。本当に木の上にいるのが泥棒でビリビリにしてしまったら笑い事では済まないのだが……まあそれはそれで置いておくとして、とにかくジルバはピエトロの持っている物の名を聞いて恐怖しついに飛ぶ決心を固めた。
  (これは飛ばないとピエトロにもっとひどい目に遭わされる。
ここは覚悟を決める)
ジルバの足が木の枝から離れた。一瞬だけジルバの身体は宙に浮き、そして次の瞬間には……落ちた。やはり人間が自力で空を飛ぶにはまだまだ時代が早いようだ。ジルバは激しく地面に衝突し、しりもちをついた。
  「アイタタタタ……」
あの高さから大ジャンプして『アイタタタタ』で済むとは……
一方その様子を見たピエトロ達は再び大爆笑して言った。
  「クククク……ヒック、まさかホントに飛ぶなんて、すごいよジルバ」
  「ごめんね、でも……アハハハ、
私たち、ホントに飛ぶなんて思ってなかったから」
ピエトロ達が自分を見て大爆笑している。そこで初めてシルバは自分がだまされていたことに気付いた。
  「ムムッ、ナルシア、初めから分かってピエトロと芝居をしていたの?! もう許さないよ」
  「でも、元はといえばジルバが私の柿を取ろうとしたからいけないんだよ〜」
ジルバに言われてナルシアはすぐに走って逃げた。ジルバもそれを追おうとして立ち上がる。
  「問答無用、覚悟しなさ、ヒック……あれ?」
  「ヒック、ジルバ、僕のしゃっくりが移ったね」
  「ウ〜、きょうは帰ります。ピエトロには今度逆襲してやりますから覚悟して待ってなさい。今はナルシアちゃんを追うことが先決デス」
ジルバはナルシアを追って走っていってしまった。後に残されたピエトロはというと、ナルシアの柿を失敬することにした。
 
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一方、ガミガミはというとしゃっくりを治す方法を考えていた。
そして一人心当たりがいることを思い出した。
  「ギルダか……でもギルダに頼むのはかなり危険が伴うな。
それなら時間に任して治したほうがいいかな? でも……」
独り言をいいながらもガミガミの暇な足はギルダの家の方向に向かう。
本来は暇だからといって向かうような所ではないのだが……
そしていつの間にかガミガミはギルダの家の前に立っていた
そして、次の瞬間にはガミガミの手はインターホンを押してしまっていた。まるで何かに引き寄せられているようで妙である。
しかもさらに妙なことに
  「やあ、ガミガミ魔王……待っていたよ」
と、インターホンを押すや否やまるで待ち構えていたかのようにギルダが出てきたのである。
  「ギ、ギルダ……何で分かったんだ?」
  「フッ……気にしないで。上がるといいよ……」
ガミガミはかなり気にしたがこれ以上問い詰めると身に危険が及びかねないと思い、黙ってギルダの家に入った。
  「しゃっくりを止めて欲しいんだね? ……いい薬があるよ」
  「……それを飲めば治るのか?」
  「ああ……何せ呼吸を12 時間止めることができる秘薬だから……」
  「いや、もういいギルダ。自然に治るから、俺様はそろそろ帰る……」
その言葉を聞いてガミガミは一刻も早くギルダの家を出ようとした。呼吸を止める薬なんて冗談じゃない。しかし、ここで逃がさないで獲物を生贄ないし実験台に使うのがギルダの役目である。が、今回はギルダはそれをしなかった。
  「そうかい、帰るのかい? ……それならいいことを教えてあげよう。
お前のかかっているしゃっくりは妖精による伝染性のしゃっくりだよ。
もし、治したくなったらその元凶に会いに行くといい。
きっと良いことがあるよ」
ガミガミはギルダの言う言葉に少し耳を傾けながらも一目散に家を脱出した。これでひとまず安心だ。
  「フッ……彼は上手くだまされてくれたようだよ。こんな感じで良かったのかな? 
パウロ……ヒック、おや? ……」
ギルダに『元凶に会いに行くといい』と言われたガミガミはその言われたとおりにパウロの家に向かった。元はといえばパウロが朝に会いに来たからしゃっくりにかかってしまったのである。パウロにもう一回移し返したら治るかもしれないと思ったガミガミは急ぎ足でパウロの家に向かっていた。しかし世界とは狭いものである。従って会いたいと思った人物にばったり会うなんてこともそんなにまれではない。だから今日それが起こることも奇跡でも何でもないことである。
  「あっ、パウロ。ヒック、お前のしゃっくりが移ったせいでこうしてしゃっくりが止まらなくて困ってるんだ。どうしてくれるんだ?」
  「そうか、じゃあいいところで会ったのう。ヒック、わしもしゃっくりが再発して困っていたんだがさっきジルバに会ってのう、このしゃっくりが治る紅茶をもらったんじゃ。ジルバがイギリスから持ってきていたのを見つけたらしくてのう。わしの家で一緒に飲もうじゃあないか」
パウロはその紅茶のパックを見せて言った。そんな夢のような話をガミガミが断るはずがない。早速ガミガミはパウロについて家に向かった。パウロの家に行く途中に、突然パウロは立ちすくした。見ると小さな街灯が倒れている。
  「ハア、もう嫌だな……ヒック、しゃっくりは治らないわ、
帰ってみると街灯は倒れているわ……今日は厄日みたいだな」
それがどうした、とガミガミは思ったが、こんなにも落胆したパウロを見てさすがに哀れに思い、
  「俺様も手伝うから二人でもう一回立て直そうぜ」
そう言って街灯に手を掛けた。そしてパウロも手伝い、街灯を立て直して家に入った。
家に入ってパウロは早速湯を沸かす準備をした。先ずはポットに水を入れなければならない。しかし……
  「おや? 水が出ないのう。水道がおかしいのかのう? 
ガミガミ魔王、ちょっと見てみてもらえないか?」
そう言われてガミガミはめんどくさく思ったが、今更諦めて帰るのも嫌なのでとりあえず水道管を見てみることにした。ガミガミが見ると、すぐに水道管を直すことができたがパウロを見てまた面白いことを思いついた。
  「パウロ、そっちの蛇口の方が、ヒック、おかしいかも知れないからちょっと水が出るところを見てくれ?」
  「ここかのう?」
言われるとおりにパウロは蛇口を覗き込んだ。
  「何か詰ってないか?」
  「何も……うわっ」
パウロが蛇口を覗き込んだその瞬間、ガミガミは立ち上がって思いっきり蛇口をひねった。もちろん、直った蛇口からは水が出てくる。
  「グフッ、ゲホッ、ゲホッ、ヒック……何てことするんだ?」
こんなことをされてさすがのパウロも怒らないわけはなかったが、
  「朝のお返しだ」
ガミガミのその言葉に返す言葉もなく、してやられたというような笑顔で
再びお茶を入れ始めた。
  「さあ出来た。おいしそうだぞ……」
パウロはそう言って二つのカップを運んできた。おいしそうと言ったのは決して嘘ではない。その紅茶は香りといい色といい本当に美味しそうだった。
  「ヒック、これで本当にしゃっくりが治るのか?」
  「さあ? 飲んでみないと分からないのう」
パウロはそう言って紅茶を口に入れた。ガミガミも続いて飲んだ。すると……
  「ウッ……」
  「グッ……」
パウロはその瞬間に洗面台に走り、ガミガミも続く……要は吐くほどにまずかったのである。それはどこかの大学の「泥コーヒー」とあだ名されるようなものなど比べ物にならないほどまずかった。
  「これは……ジルバにやられた」
パウロが涙目で言う。
  「ううっ、気分が悪くなった……」
邪悪なほどにまずいこの紅茶は下手をすると人を殺傷しかねない代物だ。
恐らくコップ一杯も飲んだら十分致死量に達しているだろう。
  「俺様、家に帰る……」
  「……ガミガミ魔王、窓の外の誰とお話しているんじゃ? 気分が悪いのならここでゆっくりしていてもいいぞよ」
幻覚まで見えてきているガミガミをパウロは止めようとしたが、ガミガミは一刻も早く帰って寝たかったので振り切って帰ることにした。
ガミガミはパウロの家の玄関を出たが、足取りが全くおぼつかない。そのうちによろけて倒れそうになったガミガミは前の何かにつかまろうとした。しかし彼がつかまると同時にそれは大きな音を発して倒れてしまい、その音でようやく彼は我に帰ったのだが……ガミガミは目の前の悲惨な光景を見て光陰の如し速さで去って行ってしまった。
やっとのことで部屋に帰り着いたガミガミは早速床に着き、今日一日を振り返ってみた。
だましたりだまされたり色々あったが、人生最大級の厄日だったのは確かである。
と、そこでガミガミは初めて気がついた。
  「あっ、パウロの家の水道……ただで直してしまった……」
  追尾
プルルル、プルルル、プルルル……ガチャ

  「あっ、ギルダ? 上手くいったぞよ。それにこの紅茶も役に立ったのう。はい……ガミガミ魔王にただ働きさせるなんてすごい? いえ、彼もそろそろ気付いて代金を請求しに来るのではないでしょうかのう?でも、きっと本人も気付いていないでしょうが奴はもう一つただ働きをさせられているんじゃ。そっちの方は少し失敗したんじゃが……えっ?物事が自分の思い通りに進んで楽しいかって?ええ、面白いのう。でも……」
パウロはジルバからもらった紅茶を飲んで言った。
  「思い通りに行かないときの方が面白いことだってあるのう」
パウロは街灯が倒れて家の塀を壊しているのを見て苦笑した。


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